JVC・ケンウッド・ビクターの製品・ブランドデザインを手がけるJVCケンウッド・デザインでは、製品開発やプロダクトデザインのプロセスだけではなく、製品発表後のプロモーションを社内のチームが手がけることで、トータルでのブランディングデザインに取り組んでいます。
プランナー・グラフィックデザイナー・Webデザイナー・CGデザイナー・映像クリエイターなど、コミュニケーションデザインに関わる社内のデザイナーたちが共創しながら取り組むJVCケンウッド・デザインのプロモーションプロセスについて、3人のメンバーが語り合いました。
製品のコンセプトを高い純度で表現するプロモーション
石黒さんは、JVCケンウッド・グループの公式オンラインストアである「JVCケンウッドストア」全体の監修を担当していますが、仕事に取り組む上でどのようなことを意識していますか?
石黒 JVCケンウッドストアは、グループが展開している3つのプロダクトブランドが揃うショッピングサイトのため、ストア全体の統一感をつくりながら、それぞれのブランドイメージをどのように構築していくのかを考えています。扱う製品の数とジャンルがとても多く、情報量が多いサイトなので、ある程度のルールを設けた上で、どのような表現が効果的なのか、JVCケンウッド本社 の関係部署や社内のプロモーションチームと日々研究しながら、最適な方法を模索しています。
製品ごとに異なる様々な訴求ポイントを捉えながら、プロモーションの肝となるキャッチコピーやビジュアルを考えていくのは毎回大変ですし、キャンペーン施策の年間スケジュールに沿って進めていくので、まるで週刊媒体を回しているような感覚もあります。更なる認知拡大と売上向上を図るため、様 々なキャンペーンを実施しながら賑やかな雰囲気をつくりつつ、ブランディングの観点で も先々を見据えた方針を検討しています。

JVCケンウッド・デザインが手がけたプロダクトのプロモーションを、同じ社内のチームが手がけるからこそのやりがいや強みはあると思いますか?
石黒 社内のデザイナーがすぐ近くで製品・ブランドの開発に取り組んでいるような環境なので、製品のコンセプトや世界観をできるだけ純度の高い状態でプロモーションに反映させ るために、普段から闊達な議論 ができるという強みはあると思います。複数のモデルのプロモーションを同時に進行できるからこそ、統一感を出したり、あえて逆の表現を採用したりすることもできているので、ブランド全体を俯瞰しながらクリエイティブコントロールができる というやりがいもあります。
小倉 この環境だからこそできるプロモーションを実践しているのは、JVCケンウッド・デザインのコミュニケーションデザインの特徴だと思いますね。たとえば、「アクセサリー感覚」をコンセプトにVictorブランドが展開しているワイヤレスイヤホン「HA-NP1T」のプロモーションプロジェクトでは、社内のプロダクトデザイナーにヒアリングしながら、イメージビジュアルの制作を進めていきました。僕が担当しているCGや映像においては、直接担当者 に製品の魅力を聞くからこそわかることがたくさんあるので、近くの席で仕事をしているデザイナーとのイメージ共有がすぐできるメリットは大きいと思います。

プロジェクトごとに様々な役割を担う、自由度の高い制作環境
佐々木さんはもともとプロダクトデザイナーとしてのキャリアを経て、現在コミュニケーションデザインを手がけていますが、領域を跨いだ経験が仕事に活かされていることはあると思いますか?
佐々木 そうですね。私はもともとイヤホンやビデオカメラ、テレビなどをデザインしていたので、プロダクトデザイナーが伝えたい製品のポイントを掴みやすいというのはあると思います。一方で、コミュニケーションデザインを担当するようになってから得られた視点もあるので、最近はどちらの気持ちもわかるからこそできる提案を意識するようになりました。JVCケンウッド・デザインでは、プロジェクトごとに様々な役割を担当することがある ため、働きながら新しいことを学び続けている感覚があります。いまはCGアニメーションについて勉強するためにみんなで情報を共有し合っていますし、学校のような雰囲気のある職場だと感じています。
小倉 カジュアル な雰囲気で情報交換できるのがいいですよね。プロモーションに関する広告業界やCG技術は変化のスピード が早いので、積極的に展示会やイベントに参加して情報収集をしています。
それに、一般的な制作会社の場合は、映像をつくる際にはディレクターやプランナー、カメラマンなどがそれぞれの仕事を担当しますが、JVCケンウッド・デザインでは、プロモーションの規模によってはグラフィックデザイナーが映像の内容を考えてコンテ を書いたり、撮影の 現場に立ち会ったりと、領域にとらわれずに制作に取り組めるという特徴もあると思います。もちろんスケジュールやコストの制約はありますが、かなり自由度の高い環境だと思いますね。
石黒 社外のワークショップやウェビナーに参加している社員も多いですし、社員の学びを会社が後押ししてくれている雰囲気があるのでありがたいですね。
新しい表現を取り入れながら、ブランドを発展させるプロモーションに挑戦
プロモーションにおいては、トレンドやテクノロジーの変化によって方向性を調整したり、アップデートしたりする必要があると思いますが、これまで仕事に取り組んできたなかで変化を感じることはありますか?
小倉 CGや映像を露出する場所の種類が年々増えてきているのは感じますね。YouTubeやSNSはもちろん、Web広告、イベント、店頭など、一つの映像を様々な媒体で展開することが多いので、なるべく全体に響く表現を考えなくてはならない難しさはあると思います。これまで静止画のみだったWebサイトにおいても3Dのコンテンツが増えていますし、今後はひとつの表現にとらわれずに制作していく必要性を感じています。
佐々木 Webサイトのコンテンツを つくる際には、ユーザーが楽しみながら見られるように、たくさんの製品のなかから自分の好みのデザインを選べるような仕掛けを取り入れる など、ユーザーを飽きさせないためのコンテンツ制作を意識しています。
また、現在私はアメリカで展開しているケンウッドブランドのSNS発信用のコンテンツ制作を担当しているの ですが、最近は特に縦型のショート動画制作に力を入れています。海外のユーザーに向けた情報発信は、国内のSNSプロモーションとはまた違う広がり方をするため、どのようなコンテンツが響くのか試行錯誤しているところです。JVCケンウッドの現地のスタッフ も私たちが制作した動画をきっかけに独自にコンテンツをつくりはじめているので、相互に 刺激を与え合うプロジェクトにもなっていると思います。

最後に、みなさんが今後仕事を通して取り組んでいきたいことをお聞かせください。
石黒 JVCケンウッドストアは、オンラインにおけるお客様とのタッチポイントの最前線なので、歴史のある3つのプロダクトブランドをさらに発展させていくブランディングに取り組んでいきたいと思います。一般的には広告代理店に依頼するような仕事を社内で制作していることはわれわれの強みですし、今後は部署間の連携をさらに強化しながら、一気通貫で実施できるからこそのブレのないブランディングに取り組んでいきたいと考えています。
小倉 なるべく普段から新規性のある要素を取り入れながら、これまで社内で制作されたことのない表現に挑戦することを意識していますが、今後は製品・ブランドらしさが一目で感じられるようなビジュアルを目指していきたいと思っています。パターン化された表現になってしまうとプロモーションとしてのおもしろ味に欠けるので、製品開発の段階から関われるJVCケンウッド・デザインの環境を活かしながら、今後も様々なビジュアル表現に取り組んでいきたいと思います。
佐々木 JVCケンウッド・グループのコミュニケーションデザインにはまだまだ発展の可能性 があると思うので、今後さらに広い層への認知を広げていくための活動に取り組んでいきたいです。届けたいターゲットはもちろん、それ以外の方にも訴求できるように、常に 新しい表現が取り入れられないか検討しながら、様々なユーザー が楽しめる情報の届け方を考えていきたいと思います。
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